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フラーレンナノ結晶

フラーレンナノ結晶とは??

フラーレンC60とは1985年に発見された炭素原子60個がサッカーボール状に共有結合した籠状分子です。C60以外にもラグビーボール型のC70をはじめ、C82やC84などが合成されており、これらの炭素原子のみからなる籠状分子を総称してフラーレンと呼んでいます。

フラーレンの分子構造

フラーレンナノ結晶を育成するために最も広く用いられている方法として、液-液界面析出(liquid-liquid interfacial precipitation:LLIP)法があります。この方法ではフラーレンに対して溶解度の高い良溶媒と溶解度の低い貧溶媒の2種類の溶媒を用います。良溶媒を用いてフラーレン飽和溶液を作製し、その上に貧溶媒を接触させて界面を形成します。その界面領域での2液混合による溶解度の低下によってフラーレン結晶を析出させる仕組みとなっています。この手法は単純で汎用性も高く、2種類の溶媒の組合せによって様々な結晶の成長が可能となります。

LLIP法の模式図

当研究室では、LLIP法を用いて一般的な分子性結晶では見られない大きな弾性変形を示すC60ナノウィスカーの育成に成功しました。また、同様にLLIP法によって育成したC60ナノシートにおいて溶媒媒介相転移によるユニークな高次構造の形成を観察しました。いずれの結果も、結晶化に用いる溶媒の種類や組合せが強く関係しており、フラーレン結晶の形態制御や物性制御に向けた新たな知見となります。

C60ナノウィスカー
C60ナノシートの相転移の様子

実験装置

  • 粉末X線回折装置(BRUKER, D8-ADVANCE)
  • 顕微ラマン分光装置(JASCO, NRS-1000, NRS-3100, NRS-4500
  • 走査型電子顕微鏡(HITACHI, S-4300)
  • フーリエ変換赤外分光光度計(JASCO, FT/IR-410)
  • 熱重量測定装置(HITACHI, STA7300)
  • トライボインデンター(ナノインデンター)(Bruker, HYSITRON TI Premier)

参考文献/引用

  • M.S. Dresselhaus, G. Dresselhaus, P.C. Eklund, Science of Fullerenes and Carbon Nanotubes, Academic Press, 1996.
  • Fullerene Nanowhiskers (Second Edition), K. Miyazawa, Y. Ochiai, M. Tachibana, T. Kizuka, S. Nakamura (Eds.) (Jenny Stanford Publishing, 2019).
  • S. Yamamoto, Y. Funamori, Y. Kaneda, M. Tanimura, M. Tachibana: Chem. Phys. Let., 730 (2019) 105.
  • Y. Funamori, R. Suzuki, T. Wakahara, T. Ohmura, E. Nakagawa, M. Tachibana: Carbon, 169 (2020) 65.